世界のバブル動向(2021年10月)エネルギーのトリレンマと中国バブル

こんばんわ。はりきちです。10月もFinancial Crisis Observatory のGlobal Bubble Status Reportを読み、いくつかのトピックについて考えてみたいと思います。

エネルギーのトリレンマ

エネルギーのトリレンマというものがあります。これは、以下の3つを同時に満たすことができないというエネルギーの条件です。

  1. エネルギーの高信頼性
  2. エネルギーの低コスト化
  3. エネルギーの環境負荷低減
図1 エネルギーのトリレンマの概念 The FCO Cockpit Global Bubble Status Report October 2021より引用

1はエネルギーを安定して調達・供給できるかどうかということです。例えばガソリンスタンドに行ってガソリンが売り切れで入れられないといった状況や、電力会社が作り出す電気が足りず停電してしまうことが起きれば、信頼性が低い状況です。

2は料金に関連します。ガソリン価格や電気料金などを想像してみてください。原油価格に連動してガソリンも高くなったり安くなったりします。電気料金は夏場や冬場に高くなりますね。

3は今流行のSDGsに関連します。脱炭素化がキーワードとなり、環境負荷を低減しようとする動きは全世界であります。

123を考えてみると、3は世界の潮流であり、今後の世界の方向性で決まってしまっているので、3はずっと固定されます。電気自動車へのシフト、化石燃料からの脱却、炭素排出量の削減が目標として各国として設定していますね。そうすると残り2つのどちらかを選ばなくてはなりません。エネルギーの信頼性かコストか。もし1の高信頼性を選んだとするならば、2のコストが犠牲になります。エネルギーに高い価格を払わないといけません。では2を選ぶとどうか。低コストで確保できたとしても、信頼性が損なわれますので、供給としては不安定な状況になります。エネルギーはモノの生産に影響します。いずれかの場合にとっても生産に影響を与えます。特にモノの価格に跳ね返ると考えられます。

つまりエネルギーのトリレンマとSDGsの帰結は、インフレです。

中国恒大集団

 レポートでは次のノーベル賞級(!)の3つ問題が提起されていました。

  1. 誰かの負債は他の人の資産であるというのは周知の事実として、もしほぼすべての不動産関係者が負債を抱えているのなら、誰が儲けたのか?
  2. 中国政府はどのようにしてシステミックカスケード(銀行危機、金融危機、経済危機)を起こすことなく中国恒大集団や他の企業の債務超過に対処するのか?
  3. 中国経済は不動産がもはやオプションとして使えない場合、何を拠り所とするか?

 どれも難しい問題です。

1ですが、ウォールストリートジャーナルには中国の債務は560兆円にもなるとの記事が出ています。560兆円という金額はまさに天文学的数字、誰の懐に入ったか。

2も相当な難題です。日本の90年代バブル崩壊や米国の00年代のITバブル崩壊を避けるにはどうすればいいのか。強権を使って国有化するしかなさそうですが、その場合海外投資家の債権は・・・考えたくないですね。

3は今後の中国の方向性です。不動産はGDPの30%に寄与したと言われていますが、不動産市場が焼け野原になった後に中国は何を成長の柱に据えるのか。この問題は日本にとっても重要な問題ですね。

中国政府は日本のバブル崩壊を徹底的に研究していると言われています。2015年のロイターの記事にあります。どういうウルトラCをやってくるか見ものです。

各種資産クラスの動向

 9月は高まっていたBubble fractionが一服、すべての株式・インデックスで下落です。中国の信用不安から一斉に下がって行ってました。バブルの成分は縮小。

図2 バブル成分の時系列。FCOのデータよりはりきち作成。
  • 個別株 14→11 下降
    • 欧州 13→10 下降
    • 米国 15→12 下降
  • インデックス 21→14 下降
    • 欧州 25→14 下降
    • 米国 21→18 下降
    • グローバル 21→14 下降

セクター別の動向

 Bubble ScoreはTransportationが大幅下落です。他は特にポジティブ、ネガティブバブル共に動きなし。Yearky Returnの項目をみると、エネルギー不安から原油価格上昇でEnergyが上昇、金利の上昇の予測からBanksが上がっていると考えられますね。はりきちとしては、すでに上がってしまっているセクターは避けて、リターンの冴えないTelecommunication SerbicesやUtilities、Food, Beverage & Tobaccoを買っていきたいです。

図3 各セクターのバブル動向 The FCO Cockpit Global Bubble Status Report October 2021より引用

個別株の動向

 上で見たように、株式市場でのバブル成分は小さくなっているので、Aggregate bubble scoreも左寄りになっています。はりきち好みの第4象限の銘柄:逆張りでロング投資家のこのむ銘柄も増えてきました。この中でもBTI:ブリティッシュアメリカンタバコが入っているのがいいですね。しばらくの間売られる傾向が続き安くなってくれれば、買い付け金額が小さく済みます。安くそれなりのもの買うのはバーゲンハンターの鉄則です。

図4 個別銘柄のバブル動向、縦軸から右側がバブルスコアが高くバブルの可能性のある銘柄群。The FCO Cockpit Global Bubble Status Report October 2021より引用
図5 個別銘柄のバブル動向、逆張りのロング投資家の好む株。The FCO Cockpit Global Bubble Status Report October 2021より引用

まとめ

 中国の不動産バブル崩壊による世界経済への懸念から、バブルの傾向は縮小しました。一方でコロナ禍の持ち直しから世界中で生産の回復が起こり、航空機が飛ばない中で輸送逼迫が発生、半導体をはじめとしたモノが入手できない状況が続きます。この状況で減産継続で原油価格が下がらない中、石炭という安価な燃料が利用できず、それでいて環境対策が推し進められるのでエネルギー不安が生じました。混沌とした状態が続きますが、どっしりと構えていたいものです。