2020年7月13日に梶山弘志経済産業大臣が石炭火力の縮小方針を打ち出しました(参照記事)。の国内株ポートフォリオには、電源開発(9513)、関西電力(9503)そして東北電力(9506)と3つの電力会社が含まれています。
そこで、今回は非効率石炭火力の廃止が与えるこれらの電力会社への影響を考察します。ポイントは以下の3点です。
- 非効率石炭火力って何?
- 各電力会社にどれだけある?
- この先どうなる?
1.非効率石炭火力って何?
まず、今回槍玉に上がっている非効率石炭火力ですが、これは次の図の中の
Sub-C(亜臨界圧石炭火力)とSC(超臨界圧石炭火力)
を差します。最も古いものでは1960年代で、導入から60年も経っていますね。これらの火力はCO2の排出量も比較的多く、政府が減らしたがるのもわかります。ちなみに臨界という意味ですが、これは使用する蒸気の温度に関係します。
実は、政府の方向性として、これら2つに変わる
高効率かつ低炭素な火力発電を推進
していくことが、すでにエネルギー基本計画でも謳われています。つまり、今回の経産大臣の発表は既定路線だということです。
現在の高効率な火力は、次の図にもある
Gas Turbine Conbined cycle (GTCC)
Integrated coal Gasification Combined Cycle (IGCC)
になります。最終的には、これらを燃料電池と組み合わせて55%を超える発電効率を得られる見通しです。
2.各電力会社にどれだけある?
今回の発表を受けて、harikichiは現在保有している3電力会社について、低効率石炭火力が発電量に占める割合を調べ、表にまとめました。
表を見ると、電源開発が全体の17%を占め、かなりの割合を占めていることがわかります。単純に当て嵌まれば、
国内の売電収入から得られる売り上げが17%減る
ことになりますね。実際には、すべての発電機を動かしているわけではないので、もう少し掘り下げます。
細かく見れば、実際の電源開発の2019年販売電力は88,770百万kWですので、このうち国内分は73,130百万kWになります。
73,130百万kW×0.83 = 60,698百万kW (国内分)
つまり廃止措置以降は、
60,698+15,640(海外分) = 76,338 百万kW
これは2019年度比で14%減っていることになります。
経産大臣の発表があってから、
電源開発(9513) の株価は7月14日:1807円 → 8月7日:1528円 15%の減少。
harikichiとしては、上記の考察から妥当な価格の下がりかたであると考えています。
蛇足ですが、今回で廃止となる電源開発の石炭火力を下記表にしています。
3.この先どうなる?
各種メディアで報じられているように、電源開発は石炭火力の構成率が大きいです。これから先の電気事業にかなり影響が出ると予想できますね。
実は、harikichiとしては電源開発をそこまで悲観的に見ていません。最初の理由は、冒頭の記事の2つ目のポイントである、
「再生可能エネルギーの導入を加速化するような基幹送電線の利用ルールの抜本見直し」
にあります。
ここで、3電力会社の電力構成を見てみます。
冒頭の記事中に、
「系統が混雑した際には環境性の低い電源から出力抑制するなどのルールに変更し、再生可能エネルギーの導入拡大を促す方向にシフトする方針」
とあり、実は電源開発が有利ではないかと考えています。
電源開発が保有する電源のうち2つ目に大きいのが、水力発電になります。45%を占めており、無視できない割合です。
水力発電は再生可能エネルギーに分類されます。
風力発電や太陽光発電が脚光を浴びていますが、現在日本国内で最も出力が大きい再生可能エネルギーは水力発電です。
2つ目の理由としては、電源開発が参画している大崎クールジェンプロジェクトです。第2節でも触れた燃料電池を組み合わせた石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)を実証するプロジェクトになります。これにより、電源開発は非常に高い55%の効率の火力発電技術を手にすることになります。
キーとなる技術は、CO2分離回収設備と、燃料電池(SOFC:固体酸化物燃料電池)の2点です。
4.まとめ
ここまで、各電力会社への非効率石炭火力の廃止への影響を見てきました。harikichiの保有ポートフォリオとしては、三社が該当しました。はりきちの見方は以下です。
- 短期的には株価の下落などの影響があった。
- 事前に計画されていたもので、長期的な影響は小さい。
電力株は価格と配当が安定しているので、定期的な買い付けをしていきたいです。